
Studio Journal
昨日の noasobi ワークショップでは、「天蚕の卵をつける会」を行いました。
小さな卵をクヌギの若葉の近くにつけ、
これから生まれてくる命を、山の中でそっと見守るための一日です。
繭から布へ向かう時間は、糸を紡ぐところから始まるのではなく、
もっと前の、小さな卵から始まっています。
小さな卵を、若葉のそばへ
天蚕は、ヤママユとも呼ばれる野蚕の一種です。
家の中で育てる家蚕とは違い、自然の木々の中で育ちます。クヌギなどの若葉を食べ、やがて緑色の美しい繭をつくります。
この日は、天蚕の卵をテープにつけ、片栗粉を少し使いながら、クヌギの枝へそっとつけていきました。
若葉の近くに卵をつけること。雨や風で落ちないようにすること。生まれた幼虫が、ちゃんと葉までたどり着けるように考えること。
ひとつひとつは小さな作業ですが、その先に、幼虫が葉を食べ、緑の繭をつくり、やがて糸となり、布へとつながっていく時間があります。

山付けという、はじまりの手仕事
卵をクヌギの木につける作業は、「山付け」と呼ばれています。
この地域では、代々、5月の連休のころに行われてきた作業です。クヌギの若葉が開き、小さな命を迎える準備が整う季節に、人の手で卵をそっと山へ預けます。
繭や糸、布になったものを見ると、そこにある時間は美しく整って見えます。
けれど、その前には、卵を見つめる時間があり、葉を選ぶ時間があり、風や雨や虫のいる山の中で、命の行方を気にかける時間があります。
noasobi ワークショップでは、そうした「布になる前の時間」にも、少しずつ触れていただけたらと思っています。
自分の言葉を残す欄
今回お渡しした資料には、「今日見つけたこと」や「手を動かしながら感じたこと」を書ける欄をつくりました。
卵の色や形、葉や枝の様子、命の始まりを見て思ったこと、今日心に残ったこと。
もちろん、書くか書かないかは自由です。
ただ、自分自身の経験から、あとで日記や記録を見返したときに、「ああ、この日にこんなことがあったのだ」と思い出すことがあります。毎年同じころに、同じような自然の出来事がめぐってくることにも気づきます。
天蚕の卵をつけた日の資料と、そのときに感じたことが少しでも一緒に残っていたら、いつかまた見返したときに、その日の空気まで思い出せるかもしれません。
観察の記録は、正しく書くためだけのものではなく、自分がその日に何を見て、何を感じたかを残すためのものでもあります。
手仕事の合間に、軽い昼食を
今回は外での作業が中心だったため、昼食は軽めに用意しました。
- 雑穀米のおにぎり
- 塩麴で味付けをした野菜とお豆のスープ
- お漬物
- にんじんケーキ
山の中で手を動かしたあとに、雑穀のおにぎりと、あたたかなスープを囲む時間。
塩麴で味を整えた野菜とお豆のスープは、外で過ごした身体にやさしく、会話も少しゆるやかになります。
作業のこと、天蚕のこと、これから幼虫が生まれる日のこと。軽い昼食の時間も、山で過ごす穏やかな一日の中に静かにつながっていきました。

次は、幼虫を見守る時間へ
この日つけた小さな卵は、やがて幼虫となり、若葉を食べ、少しずつ大きくなっていきます。
卵をつけたら終わりではなく、ここから見守る時間が始まります。
天候や葉の様子、幼虫の成長、天敵の動き。人の手でできることは限られていますが、だからこそ、自然の中で育つ命に寄り添うような時間になります。
昨年は、天蚕の繭の中にいる蛹に寄生する虫により、多くの天蚕が羽化できずに終わってしまうという、初めての悲しい出来事がありました。
その経験を受けて、今年は上にネットを張らないという選択をしています。
天蚕は、自然の中で自分の身を守りながら生きていく力を持っています。天敵が外へ出られることで、その天敵にもまた別の天敵がいたり、ほかの場所に食べるものを見つけたりするかもしれません。
人の手で囲いすぎるのではなく、自然界のつながりに助けてもらいながら見守ること。今年は、その方法を試す一年でもあります。
だからこそ、より丁寧に観察し、見守ることが大切な年になります。
山まゆの里染織工房では、この天蚕の成長を見守りながら、糸づくり、染め、織りへとつながる手仕事を続けています。
次回の noasobi ワークショップについて
次回の noasobi ワークショップは、
6月6日(土)「天蚕の幼虫を観る会」を予定しています。
小さな卵から生まれた幼虫が、若葉の上でどのように過ごしているのか。
季節の進みとともに、また山の様子を見に行きます。
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